北鎌ゲベ戦記 〜家のこと、庭のこと〜

見習庭師23歳のしごく家庭的な日記。北鎌倉駅前からお送りしております。

5月29日(日)②

鋏をめぐる京の旅、つづき。一軒目そうそう出ばなをくじかれて、意気地なしのぼくは、すっかり、もう鋏なんてどうでもええわーとさえ思ってしまいました。なんて弱いんだろう。ひとまずスタバへ避難。旅先では全国チェーンのものに謎の安心感があります。まだ昼前で時間もある、いったん落ち着こう。と、家から持って来た湯本香樹実『夏の庭-The Friends-』を読んでみるのですが、これが全然面白くない。今の自分の心に響くような言葉に出会いたいのだけど、見つからない。気配がない。てんでダメ。少年たちの友情とか、爺の死とか、別にどうだってええわー!なんて。つまるところ、本の善し悪しなんて全部自分次第なんです。その時の気分なんです。本は悪くない。見開いたタイミングが悪かった。「夏の庭」というタイトルが好きです。またの機会にさようなら。

 
気を取り直して次の刃物屋へ。さっきのとこと比べると、モダンな建物、明るい店内、気さくな店員さん。なんだかほっとしました。予定にはなかったものの、ずっと欲しかった「切出し刀」を3000円ほどで購入。ふらり立ち寄ったアンティークショップで小さな置物購入。時計台を模した、一応目盛りの振られた「温度計」らしいのですが、動いている気配がない(ので置物)。なかなか渋い。ドヒちゃんの誕生日プレゼントにしよう。そして三軒目、を出たところでぽつ、ぽつ、と雨。
 
14時20分、元・立誠小学校(立誠シネマプロジェクト)にて、西原考至『わたしの自由について』を観賞。どうせいつか観るんだろうなと思ってはいたのですが、まさかここでとは。いろんなモヤモヤが鬱積して、もう、このような気分になってしまったのです。感想。本当にいい映画だった(と思う)。かなり個人的に主観的に観たので。いろんな感情が噴き出してきて、結構しんどい箇所もあったような。でも全体としてはポジティブな気をいただきました。自分もがんばろうと。元気がでた。165分の長尺だったけど全然飽きなかった。ドキュメンタリーとしても、お話としても面白かった。このタイミングに、この場所で、観れてよかった。小学校の元校舎をそのまま利用しているので雰囲気大変すばらしく、いつかまた来てみたい所です。
 
18時、本日四軒目「源久秀」刃物店へ。実を言うと、もとよりここが本命でした。親方曰く、ウチの人はみんなまずここでキリバシを買うそう。やっぱり結局はそういう「ウチの慣習」みたいなものが一番当てになりますよねー。藤四郎がはじめから目利きなんてできっこないんです。やっぱりあの爺の言った通りだった。改めて、どうもすみませんでした。それでも今日こうしてあちこち回りながら、実際に自分の目と手で確かめようとしたこと、苦い思いもしたこと、めちゃくちゃ疲れたことは、大変貴重な経験になった気がします。キリバシ1万4700円、和鋏2万7000円を購入。ウチの名前を出したら、そこから更に2700円まけてもらいました。二丁とも同じ職人さんの手によって打たれた鋏なのですが、決め手は、その職人さんが愛知県津島市の方だったこと。津島は、去年フリーター時代にぼくが移住しかけた、あこがれの、思い出の地なのです。物を触った感じももちろんよかったのですが、最後はそれで決めました。なんといいますか、こういう選び方は嫌いじゃないです。ここにきて、ちょっと好きになりました。今朝の時点では、目や手といった自分の体の純粋な感覚だけで「本物を見極める」つもりだったのですが、実際やってみて、案外自分も、人の思いとか心とか結構文化的なものを大事にして生きているんだなあとしみじみ。またほんの少しだけ、自分の「本当のところ」に近づけたような。
 
20時半、京都駅にてモリタと待ち合わせ。これは果たして何年ぶりの再会にあたるのだろう。いや、もちろんすれ違ったり一言二言交わすことはあったのだろうけど。こうして面と向かって話すのは。深く埋もれて見えづらくなっていた友情を、この年になって再発見できて最高にうれしい。あなた、実はそんなふうに考えていたのね、とか。積もる話はあるのだけれど、しかし、ぼくはこれから急ぎ今宵の宿主と合流せねばなりません。またの再会を約束し、22時解散。それにしてもモリタ君、実家が蛇崩界隈とは。おどろきです。
 
円町。イッペイの下宿先のアパートへ。初対面早々「話は風呂で」と、併設の銭湯(23時閉店)へ急行。住人100円、友人200円。あ、タオル一枚しか持ってない。番台におばちゃん。ぼくは、自慢できるような裸ではない。いやちがう。見られて褒められるとはもちろん思ってないのですが、正確には「みっともない」と思われるのが怖いのです。いや自分では普通だと思っている。けど、誰かとまじまじ比べたことがないから実際のところわからない。いやいやいや、そもそもそんなこと気にしちゃって馬鹿なんじゃない?って。わかってる。自意識過剰。この程度のことがまだ微妙に恥ずかしい自分がほんと恥ずかしい。まだまだ若いんだな。とかなんとか、考えたのは風呂あがりのことで、その時はもう疲れてたからなんにも気にせずフルフルだった。でーん。いい湯だな。部屋に戻って、イッペイと軽く談話。もうくたくたで、悪いなと思いつつ、早めに就寝させてもらいました。一日が濃い。